投資の世界に長く居る秘訣は
「大きく勝つこと」よりも、**「致命的に負けないこと」**ではないでしょうか。
今回紹介する
『勝つ投資 負けない投資』
は、まさにその本質を静かに、しかし深く考えさせてくれる一冊でした。
派手な投資手法や「この銘柄を買え」といった話は一切ありません。
それでも、読み終えた後には
「投資に向き合う姿勢」が確実に変わる本だと感じました。
書籍情報
- 書名:勝つ投資 負けない投資
- 読むのに必要な時間:3〜4時間
- ページ数:256ページ
- 初版発行:2024年1月11日
- 出版社:
発行:クロスメディア・パブリッシング
発売:インプレス - 著者:
片山 昇(五月)
小松原 周
比較的コンパクトな分量で、集中して一気に読める点も好印象です。
本書の構成:2人の著者、2つの視点
この本は2部構成になっており、
- 第1部:個人投資家・片山 昇さん
- 第2部:機関投資家・小松原 周さん
という形で、それぞれが対談形式ではなく、自身の考えを率直に書いています。
この構成が非常に良く、
「個人投資家がどう考えるのか」
「機関投資家は何を見て、どう動くのか」
を自然に比較しながら理解できます。
第1部:片山昇さんが語る「自分に勝てる投資」
片山さんは、もともとデイトレードを行っていたそうです。
しかし、ある特定の銘柄について
自分は負けているのに、他のプロ投資家は簡単に勝っている
という話を聞き、
「これは才能や適性の問題ではないか」
と考えるようになります。
そこで辿り着いた結論が、
自分にはデイトレードは向いていない
という、ある意味とても勇気のいる自己認識でした。
そこから片山さんは、
割安な株を見つけて長期で投資するスタイルへと舵を切ります。
もちろん、この投資法は
- すぐに結果が出るものではない
- 地道な企業分析が必要
- 簡単に儲かる方法ではない
という点も、はっきりと語られています。
多くの投資本で語られている内容ではありますが、
実体験をもとに書かれているため、
「やはり王道からは逃げられないのだな」
と、改めて認識させられました。
第2部:小松原周さんが語る「機関投資家の論理」
第2部では、普段なかなか知ることのできない
機関投資家の視点が語られます。
特に印象的だったのは、
機関投資家は、すぐに動けない
という話です。
機関投資家は扱う金額が非常に大きく、
しかも顧客から預かったお金を運用しています。
そのため、
- なぜこの銘柄を買うのか
- どんな論理で投資判断をするのか
を一つひとつ積み上げる必要があり、
個人投資家のように直感的・瞬間的な判断はできません。
以外にも機関投資家の中には、動きが早く無い部類もあるのだと認識できました。
「効率的市場仮説」と株価の現実
本書の中で特に興味深かったのが、
**2013年にノーベル経済学賞を受賞した
ユージン・ファーマ教授の「効率的市場仮説」**の話です。
理論上は、
- 情報に格差がなければ
- 株価はその情報を正確に反映する
はずです。
しかし現実の世界では、
- 情報の格差
- 人の期待や感情
によって、
理論的な株価と実際の株価は乖離します。
期待が大きければ株価は上がり、
期待が剥がれれば株価は下がる。
この「当たり前だけれど言語化されると腑に落ちる説明」が、
非常に分かりやすく書かれていました。
個人投資家が戦える場所はどこか?
ここからの話は、
大企業株と中小企業株の違いへと進みます。
- 大企業株
→ 情報が広く行き渡り、情報格差が小さい
→ 株価は比較的安定しやすい - 中小企業株
→ 情報格差が生まれやすい
→ 機関投資家が調査対象にしない場合もある
つまり、
小型株こそ、個人投資家が機関投資家と戦える場所、勝てる可能性が高い場所
である可能性がある、ということです。
個人投資家が徹底的に企業分析を行い、
将来の業績の伸びを誰よりも早く見抜くことができれば、
機関投資家に先んじて投資できるかもしれない。
この視点は、非常にワクワクしました。
読後の感想まとめ
- 具体的な投資手法は書かれていない
- しかし、投資に対する考え方の土台がしっかり作られる
- 「負けない投資」とは何かを深く考えさせられる
- 個人投資家が取るべき戦略のヒントが詰まっている
派手さはありませんが、
長く投資を続けたい人ほど読む価値がある一冊だと思います。

